事業資金
事業資金とは、事業を立ち上げるたり、事業を運営するために必要となる経費のことです。
例えば個人で飲食店を新規オープンする場合、店舗物件の取得費用、取得した物件の内外装工事費、調理器具や備品などの購入費、従業員の募集費用、広告宣伝費、原材料の仕入れ費用などが、事業資金に含まれます。
○事業資金を準備する前に必要なこと。
①金の把握
たとえ、個人が経営する飲食店であっても、人それぞれやりたいことが異なる限り、必要なものが異なるので、店舗開業にかかる金額も異なります。まずは、自分が持っているお金と、親や兄弟など近親者からの資金援助はいくらかを確認し、自身でどれくらいの金額が用意できるのかを把握することが大切です。その後に金融機関からどれくらいの金額が借りられるのかを想定し、2つを合わせた金額の中で、店を開業し運営していけるのかを見定める必要があります。
②「事業の明確化
何より大切なのが、起業を決意し、自分のやりたいことを決め、どうやってそれを継続するかを明確にすることです。そのためにも、開業の際には、自身のお店の概要や事業理念などをまとめた、事業計画書を作ることも非常に大切です。
②-1 事業計画書と収支計画書
お店の概要や商品・サービスの内容、利益を上げる仕組みなど、これからオープンするお店の詳細と将来のビジョンが定められた運営の設計図です。また、お店の運営でどの程度の利益を上げるのか、金融機関から融資を受けた場合、利息を含めどれくらいの期間で返済できるかというシミュレーションをまとめた、収支計画書の制作もお勧めします。
事業計画書と収支計画書を準備することで、ご自身の事業について十分な検証を行うことが出来ますし、金融機関へ融資を申し込む際にも、希望の金額での融資が受けられる可能性が高くなります。
起業する方だけではなく、すでに事業や店舗を運営しているが軌道に乗らない方や、新規事業や運転資金のために追加融資の必要を感じている方についても、事業計画書と収支計画書の見直しを行うことが大切です。
○具体的な資金調達について
資金調達の方法は、株式の発行等の自己資本による調達や、社債の発行等の負債による調達(直接金融)、金融機関からの借入れ(間接金融)などがあります。
■直接金融での資金調達
・株式の発行
株式の発行によって資金調達する方法です。新株発行により自己資本が増加し、多少の損失が発生しても債務超過に至る恐れが少なくなります。また調達した資金を返済する必要もありませんので、最も一般的に用いられる資金調達方法の一つです。
・社債の発行
民間の会社が発行する債券のことで事業債とも言います。金融機関からの借り入れではなく、株式と同じ直接金融で事業資金を調達する方法です。ただし、社債の場合は会社の規模や安定性が求められるため、社債を発行している多くの会社は東証一部二部上場企業に限られています。
■間接金融での資金調達
・金融機関からの借り入れ
民間の金融機関は、都市銀行(都銀)、地方銀行(地銀)、信用金庫(信金)、信用組合(信組)、ノンバンク系など様々ですが、中小企業や個人に幅広く融資しているのが信用金庫と信用組合です。この2つは相互扶助を目的に利用者が会員や組員となって運営されるため、融通の利く融資を行う可能性が高く、返済でも猶予をくれる場合もあります。ただし、融資の審査基準が比較的厳しい上、審査書類や手続きが複雑で時間がかかる場合もあります。少しでも早く事業資金を調達したい方は、ノンバンク系など審査スピードが早い金融機関で借り入れを行うことも可能です。
また、民間の金融機関では取扱いが難しい創業時の融資に対して支援を行う政府系の金融機関や、信用保証協会という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける方法など、資金調達には様々な方法がありますので、ご自身の事業にふさわしい方法を慎重に選んでください。
○資金調達での問題
金融機関による資金調達では返済義務がありますので、返済が出来ない場合は債務不履行に陥り、担保・保証を要求されます。経営者個人で借り入れした場合、経営者本人が借金を負ってしまう場合があります。また新たに事業を立ち上げる際には個人保証のみで必要な事業資金が借りられるか分かりません。もし、不動産等の資産がある場合は、それを担保に資金調達を行う方が良いケースもありますので、ご自身の事業にふさわしい方法を慎重に選んでください。また、株式発行による資金調達では、返済義務がなく、銀行融資での債務不履行のような事態は起こりませんが、発行株式の50%以上を占有した者が経営権を持つことができるため、株主に経営権を奪われる危険性もあります。
業資金を調達するために最善の手法を慎重に選ぶことが、事業を運営する上での大きなポイントになります。